礼子さんが、男の方が私に合うと判断し、親しみ易くする為にあのふざけた性格が加えられている――いや、元々、個性なんてなかったのかもしれない。無数に並ぶ黒い立方体達の様に、人間の言葉など喋らず、低い唸り声で淡々と膨大な計算を処理し続けるユニットの一部であってもおかしくはない。しかし、礼子さんは「彼」を産み出した――それらが、他の黒い立方体群と性能が異なっているのかは私にはわからないが、純白の衣を纏った立方体達からは、自分達は礼子さんに選ばれ、高度な性能と思考能力を与えられて、個性が存在している事に誇りを持っているという喜びと、相応の気構えが感じられた――。
それは、ミネルヴァ本人の意志に他ならないのだろう――「彼」には、人間をこの世界から消去するという重い使命が課せられているのだから。
「あれれ、なぁに考え込んじゃってんの舞ちゃん――」
「別に、何でもないわ――」
「んんっ、怪しいなぁ」
「――――」
「さて、そろそろ戻りましょうか――――」
すっと礼子さんが立ち、来た道を戻る。
「またね、礼子――」
ミネルヴァが礼子さんの背中に言った――。



