アイ・ドール


 これ以上、私を誰に逢わせようというのか――――「組織」の重鎮が控えている様な、厳かな場所でもない――。


 先程の空間とは周波数の異なる低く、地を這う唸り声を静かに発している黒い立方体の群れ――熱対策が施されている筈だが、足を踏み入れた瞬間、吹きつけた熱風と共に「彼ら」から放出される「気」によって一時、意識がのぼせる程に暑い空間――――。


 礼子さんは、ひんやりとした躰の動作で先を進む――追う私の額から、じわりと汗が滲み出る――。

 そんな私を面白がる様に、「彼ら」の意思である赤、青、黄、緑、白色の発光ダイオードランプがリズミカルに点滅を繰り返し、私を笑っている――。



 「彼ら」を全て数えるのは不可能だ――ここは、ヴィーラヴが人間を更新していた場所など比べものにならない程に広大で、サッカーの試合を苦もなく行えてしまうであろう空間に整然と佇み、胎動している姿はある種、芸術的な風景に見える――――。




「ここよ――」

 どれ位、歩いただろうか――ようやく礼子さんは目的地に到着した――。


 スーパーコンピュータ群の区画から独立した10個の純白の立方体達――。