アイ・ドール


 程なくして、円形の広場の様な空間に辿り着く。広場の中央には、擦りガラスの華奢なカウンターとガラスのパーティションで仕切られたスペースに、三人の女性が優雅に仕事をこなしている――無論、彼女達が使用しているオフィスファニチャーの類は、イタリアや北欧製の物ばかりであった――。

 そこへ歩を進めてゆく――。


「おはようございます――高樹 舞様ですね。お待ちしておりました――」

 一人の女性がすっと立ち上がり、私に一礼して淑やかな笑顔で言うと、別の女性が受話器を取り、私が訪ねて来た事を社長に報告している。


 私とそう変わらないであろう年齢――上品にブランドスーツを着こなし、文句のつけようない対応とメイク。

 自信に満ち溢れる仕事ぶり――。

 三人の全身からは、ここを足掛かりに、もっと上の世界へ上昇したいという意欲が滲み出ていて、羨ましい位に輝いて見えた。


 それに比べ――私は――。


「お待たせ致しました高樹様、社長室へご案内致します」

 私を笑顔で迎えた秘書が、社長室へと導く。残る二人に軽く頭を下げると、仕事中の二人は立ち上がり、こんな私に深々と頭を下げた――。