アイ・ドール


 いつしか人間は――


「汚く」

「醜く」

「怠惰で」

「無責任で」

「誤魔化し」

「欺き」

「偽る」

「秩序を失い」

「慈悲を失い」

「愛を失い」

「心を潰し」

「魂は奪われ」

「私利私欲に追われ」

「互いに争い」

「真実を覆い」

「道を誤り」

「誤りを正さず」

「真の人生を棄て」

「この世を嘆いて」

「死んでゆく」




 これが、この世界の真実――。


 妙に心が穏やかで、納得さえしている――――この国に施設があり、ヴィーラヴが産まれたのも必然といえる。


 曖昧で無関心――統治システムは脆弱で滑稽だ――――にもかかわらず、開発、製造、生産技術においては現在も他国を凌駕し、人材も優秀で「従順」だ――。


 礼子さん達の想いを具現化させる環境として理想的な国であり、政治的にも操り易い――。


 既にヴィーラヴが存在している――――彼女達に心奪われ始めている私がいる――これ以上、礼子さんと対峙しても勝ち目はない――――私の心と二人だけの空間が煮詰まってゆく――。



「こっちへ来て、舞――」

 礼子さんが、空間の外へと誘う。