私達が生き残る選択肢は、もう残っていない。
「故に、終わらせるの――――」
私の心の想いを解読して、礼子さんは力強くも切なく言った――。
「人間はね、いつしか己の存在を偽人(ぎじん)へと変えた――――羨み、妬み、純粋な魂を失い、自らの利潤のみを求め、他人を、愛する人を蹴落とし、カネに人生を翻弄され、何の躊躇もなく人間を、動植物をあやめる。自らが安全ならば、家族が悩み苦しんでいても手を差し延べずに、自分の周りに薄く固い膜を張り、その中で自分には関係ないと笑う――」
「支配している筈の人間が創り出した便利で安楽な人生に、心を削られ、魂を偽人に奪われているとも知らずにね――」
そう――巧みに擦り寄り、心の奥底に侵食し、魂に寄生して人間を偽人化してゆく――――偽人に乗っ取られ、私達は己の人生を蝕み続ける――。
しかし、それは我々自身が招いた結果に過ぎない――――責任は、一人一人の人間が負わなければならない――偽人を生み出したのは自身の弱さなのだから――――。
この世界で頂点に君臨し、繁栄を謳歌した対価を「利息」と共に支払う期日が迫っている――――。



