アイ・ドール


 始点は変えられないが、終点は人間の思考、行動で「創り」、実行が可能――。その為の兵器も有している。軍事戦略の均衡と世界平和の安定という名目の為に。そして私達人間は、自ら生み出した技術を善悪の例外なく、必ず使用している。


「下品な兵器は使わないわよ――」


 兵器の種類は私にも想像はつくが、それではないという――――まだ、完全な形にはなってはいないと口を濁す。が、開発、実験もこの施設群の何処かで進行している――では、それは何であるのか――。


 風であり、光であり、霧であり、水であり、透明であり、美しいものを目指していると語る礼子さんの瞳は、快と狂が入り交じった水分を湛え、輝いている――。


 しかし、最終的にどの様な形態になるのかは私にもわからないと礼子さんは笑い、両手を広げ、首を左右に振った――。



「せめて――苦しまない様に旅立たせてあげたいの――――」



 ぽつりと呟いた――。


 自然に、まるで眠る様に目を閉じ、死んでゆく――――恐れも、痛みも感じる事なく、全ての人間が死ぬ。

 人種も、階級も、大人も、子供も、男も、女も、等しく死が分配される――。