一握りの、投げやりともいえる計画の為に人類は消える――――何の罪もない人間をも巻き込んで――。
しかし、普通の人間達が抵抗しても多分、無駄に終わるのだろう。昔も今も、彼らにあらがう力を私達は持ち合わせてはいなかったのだから――。陰謀だとか策略だのと、彼らの行いを我々は想像力豊かに非難するが、「そんなものはないの――――」と礼子さんは微かに笑い、言った。
何も、僻む理由などない――――素直な心で私達は生きてゆけば良かったのだ。普通である事を喜び、敬い、互いに分かち合う――。事実、礼子さんも、彼らもそれを認め、自らを蔑んでさえいる。私、いや、普通に暮らす人達は生きながらにして既に「勝者」だったのだ――。「敗者」などいない――――それぞれの人生を認め、それぞれの領域で慎ましく生きる。それで良かったのだ――。勿論、貧困に喘ぎ、絶えず紛争が続く世界で生きる人々も存在する――しかし、私達は救っただろうか。「神」でさえ成し得ないものを、たかが普通の、カネを持つ人間が成し得る筈もない――。産まれ出る環境を現時点において、私達は選べないのだから――――心の拠り所を他に求めるしかなかった。



