「可哀想だけれど、これが現実なのよ――ただ息を吸い、そこにいるだけでは生きてゆく事さえ許されない。絶えず社会と繋がり、労働力を提供――対価としてカネを得て生命維持の為に分配、使用する事で自分や自分以外の人間の生命も維持されてゆく――――カネという概念が消えない限り、この生命維持の輪は私達が存在する間は脈々と受け継がれてゆく――――ならば、カネの概念を覆し、人間は生きてゆく為の新たな価値観を創造し得るのか。どう思う――――舞さん――」
「恐らく、それは――」
「ええ――――そう、不可能ね」
「私達は、それぞれの神を信仰しているのではなく、カネを信仰しているのよ――――人間が崇め奉る神は現実的には何もしてはくれない。全ての人間達にあまねくカネを分配するでもなく、貧富の差や人権の格差も解決はしてはくれない――それでも人間は神に縋る。縋って日々の溜飲を下げ精神的安定を得る――――しかし、この世界で生きてゆく為にはカネという物質的価値が必要。ただの丸い金属と印刷が施された紙なのに、あまたの神はそれを提供できない――――何故なのかしら。絶対的価値観の象徴である存在の筈なのに」



