アイ・ドール


 人間が世界からいなくなっても「誰も」悲しまない――――瞳の奥の真意で、詩織は語る――。


「どうなの――マイマイ――――」

 表情は変化していない筈なのに、強く同意を迫る様な詩織の視線。



「――――」

 確かに、その通りかもしれない――――人間が消え去っても「誰も」涙を流す事はないのだから。それどころか、命を蹂躙された者達は、狡賢く残忍な我々が消滅した現象を悦び、私達とは異なる新たな歴史を刻んでゆくのだろう――――「母体」もそれを密かに望んでいるのではないか――。



「そうだよね、マイマイ――」


 私の思考を詩織は感知し、応える――――言葉に出す出さないの問題ではなく、躰と躰、心と心、魂と魂との感じ合いによって「彼女達」と対話を行っている。


 違和感など覚えない――――もう無意識に私の感覚の全てが対応して、言葉を紡ぐ必要がなくなっていたのだ――。


「ふふふっ――――」


 にやりと礼子さんが口元を緩めた――。


「何ですか――――」

「何でもないわ――――」


 一瞬、私に視線を飛ばした後、詩織を眺める礼子さんには読み取れるのだろう――――。