そうあるべき思考と我々の歩みでなければならない――――礼子さんが嘆く。
が、しかし――今を刹那に生きる私達の思考は、真逆の方向へと突き進めている。
私達が想い描く未来の風景は、暗く湿っている――――灰色の背景に、酸性雨が降り注ぎ、謎のウイルスが蔓延し、人口は減少傾向に陥り、「統一」された社会で人は全てを管理され、狭い価値観の枠の中で自我を押し殺され、いつしか体制側に洗脳されて何の疑問も持たないままに「どんより」と人生を終える――。
そうあって欲しいかの様に今を生き急ぎ、過剰な私欲を貪り、上っ面の感謝の言葉を紡いで己を守る事で表層的な人間関係を構築し、黒く爛れた心を覆い隠す――結果、魂の劣化は加速してゆく――――。
何なのかしら私達って――――眼を閉じながら、絶望がはにかみに変換された表情と声で呟く。
「人間にも、天敵が必要だったかしら――」
少し時間を空けて再び開かれた眼は――恐ろしく、美しくも見えた――。
恐らくは事実上、この世界においての食物連鎖の頂点にいるのは人間である――人間を「食う」事で生存している者がいないという点において――。



