何故、葵とわかるのか――――恐らくは彼女達と歩んだ過去の記憶の蓄積と、筋肉繊維のままの異様な姿ながらも読み解ける個々の躰つきや、私を見ているかの様な眼球から個人を特定し、葵と認識している。
「今、動いたのは誰かしら――」
「葵です――」
「順番に言ってみて――」
「流花、アリス、雪、モコ、モカ、万希子さん、詩織、キャロルアン――ですよね――」
礼子さんは黙っていた――しかし、背中が笑っていて、順番が正しい事を伺わせている。
再び警告音が鳴り響く。
頭部から、乳白色の液体が透明な液体を下へ押しやりながら侵入する――互いの液体の比重が異なっている為に、混ざり合う事なく綺麗な境界線を保ち、遂に透明で粘度のある液体はケース内から去る――。
乳白色のケース内に薄らと葵が見える。
先程とは音色の違う警告音が鳴り、加えてモーターが回転する音が重ねられ、乳白色の液体が生き物の様に回り、踊っている――――。
程なく、撹拌を終えたケース内から液体が排出され、またしても透明な液体が注入されて青白く閃光を放ち、去ってゆく――しかし、まだ葵ではない。



