アイ・ドール


「男女の間のみに愛は成立するものではないわ――従来の価値観に縛られてはいけない。愛とは、人を思いやり、人の為に自分の愛という心を与える見返りを求めない高尚な行為――」



 父の愛も受けず、ましてや母の愛など得られるべくもなかった私にとって、愛とはあの時期の一時的な「現象」しか記憶にない。あの日以降、私は愛という感情を封印していた筈だった。


 しかし、礼子さんは私に愛があると言った――礼子さんを、ヴィーラヴを葬り去りたい殺意をも凌駕したのは、愛なのだと――。




「万希子の件の時にも言った筈よ――あなた方の間には愛があるって。万希子、アリス、葵と流花――他人や私に頼っても良かったのに舞さんはたった一人で現象に向き合い、解決した。それを愛と言わずして何と言うのかしら――」



「――――」



「見て――彼女達を――」


 包んでいた手を解き、立ち上がりガラスの壁へ礼子さんは歩み寄る――透明で特殊な液体で満たされたシリンダーケースの中で「人間」へとなろうとしているヴィーラヴを腕を組み、見つめている――。



 私はソファーに座ったまま、礼子さん越しに彼女達を見る。