アイ・ドール


「は、はい。ありがとうございます――実は初めての着信だったんです。まさか、社長からとは思わなくて――」

「そうだったの――でも光栄だわ、初めては嬉しいものよ。で、今話をしても大丈夫かしら――」

「はい――」

「仕事の方はどうかしら、楽しい――」

「お陰様で――職場の方々も良くして下さって助かっています」

「そう――良かったわ。彼からも舞さんの事をそれとなくって、ここ数日、何度も言われていたものだから――」


 父――

 顔が曇った――心配なら直接、私に聞けばいいのに――社長までけしかけて回りくどい事を――。

 父に対する私の怒りを、僅かな沈黙の時間から読み取った社長は言った。

「まぁ、そう怒らないで。彼も心配なのよ、舞さんが――何せ一人娘だから。家を出て一人暮らし――男親なら当然よ。思った事を口に出さず、誤解を招きやすい所は学生時代から変わらないけれどね」

 女と男の友情――経験のない私には、何だか羨ましい関係に思う。

「それでね、舞さんに是非任せたい仕事があるの――あなたの将来にも必ず役に立つ経験になる筈だから――」


 私に期待している――嬉しい――。