一歩づつ、ゆっくりと進んでゆけば良い。穏やかに流れている時間を感じ、素直な心で自分なりに生きてゆけば、おのずと進むべき道は見えてくる――。
復帰して2ヶ月弱、広報の事務仕事にも慣れ、たわいのない会話もできる仲間もできた。
皆、私を快く受け入れてくれて、それとなく事情を察して優しく接してくれる。
満員電車は苦痛でしょうと、社長は車通勤までも勧めてくれた。
何と恵まれた職場だろうか――ヴィーラヴを間近に感じられる場所に身を置いている状況を私は最大限に喜び、仕事に邁進しなければならない――もう、なくなった「者」にいつまでも魂を奪われて生きている場合ではない――。
それが、下級層で蠢く大多数の人達に対する私なりの責任の取り方と、生きる理由なのだと勝手に決めていた――。
「また――明日――――」
体育座りを解き、仰向けでマットレスに身を委ね、明日への活力を司る心に火種を灯す――。
「えっ――――」
一度は捨て、最近になってただ世間体を取り繕う為だけに新調し、普段は鳴る事のないスマートフォンが初めての着信音を鳴らした――――。



