「あっ、ホイールが18インチになってる――――革張りシートにパドルシフトに――うん、ナビも最新バージョンにアップしてる――」
一回りし外装を確認して運転席に座り、シートポジションを合わせた詩織は、本革巻きのステアリングの感触を確かめながらはしゃぐ――。
アリスが私からスマートキーを奪い、「マイマイ車」と呼ばれ、それに乗るメンバーと車に乗り込む――――「詩織車」のメンバーも同様に、新車特有の匂いと、革張りシートの香りを楽しみながら、シートの着座感を確認している――。
偶然なのか、前車が「ああなる」事を確信しての、この日の納車なのか――それとも、単にライブが成功したご褒美なのか――。
社長の意図はわからないが、「キズ物」の車を使えないのは事実――。
「高樹マネージャー、そろそろ時間です――」
エレベータホールから女性クリエイターが呼ぶ。
不満たらたらのマスコミ対策として、会社側が撮影した昨日のライブ映像の一部配信と、記者会見を急遽、開催する事になった。
「今行きます――皆、時間よ――」
「はぁい――」
名残惜しそうなメンバー。



