アイ・ドール


 ヴィーラヴは、まだここにいる――正確には明日の朝まで留まる。


 その為だけに、会場施設内の一部を改装して、彼女達が快適に過ごせる空間を用意していた。


 ライブの汗を流し、気の置ける女性クリエイターらと寛ぐヴィーラヴ。


「何か、合宿みたいで楽しいね――」

 詩織が弾む――。


 私は、葵と流花と話し合おうとも思ったが、枕投げに興じた後、疲れ、合宿に相応しい「布団」に身を預け、寝息を立てて夢見心地の所を起こすのは酷だと感じ、次の機会を待つ事にした――。



 翌朝、深夜の内に大部分のセットや客席が撤収されたホールに乗り入れた運送会社のトラックのカーゴ部分に、ヴィーラヴや数人のクリエイターが乗り込む――このカーゴ部分もタワーに到着するまで快適にいられる様に、空調やソファーなどがしつらえられた「特注品」だ――。


「あれっ――」

 アリスの意外そうな表情も気にせず、私は助手席に座った――単に景色を眺めたかっただけだ――。




『ありゃりゃ――』


 タワーの駐車場で、パールホワイトとディープブラックの、私達がいつも乗っていた車を見たモカとモコのシンクロ――。