アイ・ドール


 どうせわかってしまう事――神経を尖らせてまで、開催場所を秘密にしなくてもいい――――社長の言葉通り、ネット上において場所は既に特定されていた。

 会場に入れる者、入れない者、マスコミ、野次馬――会場周辺は、様々な念と熱が放出し混ざり合い、異様な空間だった。


 ヴィーラヴに逢う事を許された者からチケットを奪い盗ろうとする輩や、混雑に乗じて会場内に侵入しようとする者達は、警察や警備会社によって逮捕、排除された――会場が「公開」された分、セキュリティには念を入れた。


 彼らの一部には、「こんな」人間達もいるのだから――。




 3度のアンコールを含めたライブは、3時間弱続いた――ヴィーラヴを目の当たりにした者達はただ、酔い痴れていた――。


 しかし、会場の外側で僅かでもライブの「おこぼれ」を欲していた者達や、てっきりライブの一部でも撮影が許可されると踏んでいたマスコミは、これで終わる事に納得はしていない。

 陶酔した者に群がり、インタビューするマスコミ。一方で、あらゆる出入口に張りつき、ヴィーラヴを待ち構える者達――。



 ダミー車両が数ヶ所から出てゆく――。