アイ・ドール


 その手で髪を掻き乱す――こんな事になるなら、二人の関係を否定すれば良かったのか。いや、否定しても昨夜以上の行為で、葵と流花は私を弄んだのかもしれない――。


 手を止めた――もう後の祭り。今更、頭の中で想いを巡らせても、自分の気持ちがもっと暗く堕ちてゆくだけだった。



 完全には洗い流せなかった「角質」を残したまま、ブースを出てバスタオルで体を巻く――服は何処かと探していると、それが葵と流花の、せめてもの償いの気持ちなのか、あんなにいやらしく私の服や下着を脱がし、床に散らしたものが、折り畳まれ籠に入れられていたり、ハンガーにかけられている――。


「くっ――――」


 昨日の「衣」を纏い、忌まわしいベッドルームを後にした。



 二人はリビングルームのソファーに座り、ニュース番組を「眺めて」いた――後ろ姿の葵と流花の雰囲気からは、正確に情報を読み取っているとは思えず、大開口部から広がる都会の風景にも視線が届いていないのだと感じた。


「おはよう、マイマイ――」


 気配を感じた葵が呟く。

「――――」


「そうだよね――びっくりだよね。普通じゃないもん――」