「そうだよ――越えてるよ、一線を。キスもするし、躰も求め合う関係って事――」
私をも、自分達の世界へ誘うかの様な眼と仕草と言い様の流花。
私自身、女子高在学時に、少なからず二人の様な関係性を目にしている――女性同士が愛し合う行為に、嫌悪感などない。当事者同士が合意の上で愛を育む事に問題はないと思う。
しかし、周りの人間に悪い影響が及ぶとなれば、黙ってもいられない――葵と流花の愛は、良好なヴィーラヴの関係性を崩壊させる可能性も含んでいる。
危険な「影」だ。影はやがて光を呑み込み、無の世界が支配する――ヴィーラヴの存亡にも繋がる影になってしまうのではないか――そう私は危惧した。
「流花ちゃんとつき合っちゃいけないんですか――」
泣き伏せっていた葵が身を起こす――流花が自分の胸元に葵を優しく引き寄せる――。
「私はね、葵と流花がつき合って愛し合う事に口を挟むつもりはないわ――」
二人の表情が緩む。
「でも、今日の葵の態度は頂けないわ。葵もわかるわね――モコに八つ当たりしても何にもならないわ」
「――――」
緩んだ表情が曇る。



