アイ・ドール


 私は初めての恋を知った――やがてそれはごく自然に愛へと進化し、彼との濃密で官能的な世界へと進行してゆく――――。


 この世界を守る為なら、どんな事でもした。彼と父を引き合わせ、作品の世界観を理解させ、小さなギャラリー兼オフィス設立の為の資金の一部を提供させたりもしたし、「好き」ではない父のカネと人脈を、最大限に利用したあの頃の私は、今にして思えば信じられない程、積極的になり、強引で狂乱的だった――。



 愛と希望が安定した領域に達した時、誰も私と彼との世界を破壊する事など不可能なのだと確信さえしていた――。



 新世界が広がっている――煌めく愛の光と希望が示す未来へと私達を導いて、二人によるときめきの世界が永遠に続いてゆく――――そう想っていた――。




 けれど――光と希望が新世界を輝かせるエネルギーを失った時、ある筈だった世界を覆うプラチナのコーティングは呆気なく剥がれ、隠されていた「真世界」が姿を現した――――あの日、あの時から――。




 私の脳内の記憶装置は、その日を境に以降の再生を拒む――。


 新世界が崩壊し、彼が去ってゆく悲しい過程を――。