「川の流れを見てるとね、自分の体が流れに乗ってすうっと流されている感覚になるんだ――――このまま、本当に流れに任せて――」
「けどねアリス、踏み留まったよ――アイドルになりなさいって、礼子さんの言葉、思い出して――――だから、あの日からアリスのママは礼子さんなんだ――」
アリスの声に生気が戻ってゆく。
「私、何も知らなくて――――ごめんなさい」
「ううん、気にしないでよマイマイ。きっと、礼子さんの気配りだと思うよ――実際、メンバーどうしでも互いの家族の話ってしないよ――」
「そうなの。確かにアリスの家庭環境は私も残念に思う――でも、だから万引きなんて――」
「復讐かな――」
「えっ――」
「さっきのスーパー、パパだった人のいた所の系列スーパーなんだ――アリスの家庭は崩壊したのに、客達や社員やパート達は平然と買い物したり、働いてさ――おかしいよ。何で、どうしてって――」
伏せていた身を起こし、眼をしかめて低い声で言う――戸惑いと憎しみの感情が練り合わさっている。
突いていたアイスクリームはチョコレートソースと絡み、液体化していた。



