アイ・ドール


 心から、柔らかい輻射熱を放出して、全身が暖かくなってゆく感覚――。


「ほら、生き生きとしてるでしょ」と画像を示し、彼が笑顔で語りかける。


 返す言葉が見つからない。


「――――」

「どうしたの――」

「いえ、ここに映っている自分が、何だか私ではない気がして――」

 俯き、照れた声で答える自分が恥ずかしい。


「照れる事なんて全然ないよ――」


「――――」

「画像、消去しなくてもいいよね」



「い、いいわ――」

 恥ずかしく答えると、勢いよく奪い取ったカメラを彼に返していた。


 何故、承諾したのだろう――。
 
 どうして――突然、声をかけられて名前も知らない、カメラを携えて笑って私を見つめるこの男が、腐り、欲と妬みと偽りに汚染され、ヘドロの土壌に沈んだ私の心をサルベージしてくれるのだろうか――。



「意外だな――」

 右手でうなじを撫でながら言った。

「それで、今ここに映し出されている私には、私自身の、私たらしめている本当の姿が焙り出されているのかしら――」

 もう、怒ってなどいなかった――ただ、確かめたかった。


「そうさ――」