「――――」
「出世なんて、しなくてもアリスは――――人間って、強欲だよね――」
アイスクリームを突くのを止め、ぐったりテーブルに伏せたアリス――私にでも、外の景色にでもないぼやけた視線でその後の家族の風景を呟き続けるのを私は黙って聞いた――。
アリスの家庭は崩壊する――。
過大な重圧に耐えられなくなったアリスの父が逃げ込んだ先は、妻への暴力という行為だった。
アリスの母を殴り蹴る父――いつしか仕事を辞めた母が自身の希望の光を「酒」に求めるのに時間はかからなかった。
暴力の中に潜む快楽のみを抽出し、楽しむ父――暴力による痛みも、吐き出した血も、酒の魔力で中和して快感へと変換する母――。
「もう、こんな生活嫌だよ――パパもママも立ち直ってよっ――」
勇気を出してアリスは言ったという――しかし返って来た答えは落胆させる言葉だった。
「お前なんて、この世に産まれてこなければ良かったのに――って言われちゃったよ――」
そう言った時だけ、気持ちが繋がった夫婦の様に同時に言い放たれたのだという――。
アリスの瞳が潤んだ。



