自らの犯罪行為は何処へやら、わざと逆ギレし、相手の出方を伺い形勢が有利と見るや、容赦なく「口撃」を浴びせて相手を完全に沈黙させてしまう計算高さと強かさは如何にして形成されたのだろうか――。
「やだぁマイマイっ、そんなに見つめないでよ。恥ずかしいよぅ」
足をバタつかせ、顔を赤らめるアリス。
無垢で幼い少女の顔と、冷徹で狡猾な顔を使い分け、巧みに人の心を操るアリス――知らない内に私も操られているのだろうか――心を――。
仮にそうだとしても、アイスクリームを満面の笑みで食べている愛くるしいアリスを見ていると、巧妙に仕組まれた、何だか心地好い感覚に浸っているのも悪くはないと思う自分が、心の片隅に存在しているのも事実だった――。
しかし、だからといってアリスの行為が許される筈もない――。
心地好い世界を遮断し、アリスを諌めなければならない――。
「でもアリス、どうしてこんなに遠くまで来て万引きなんてしたの――わからないわ――」
私の問いかけにアリスは瞬時に顔を曇らせ、半分程残っている溶け始めたアイスクリームをスプーンで突きながら呟く――。



