「甘いねっ、マイマイっ――あいつら最初っからカネ目当てだよ――」
強かな瞳のアリス。
「えっ――」
「だってさ、考えてもみなよ。アリスが逆ギレした時点で普通、警察呼ぶよ。でもあいつらはそうしなかった――って事は警察沙汰にしたくない――そうなると都合が悪い。色々とね――となると、残された選択肢は、万引きなんてなかった事にする――対価として二人はカネを受け取り、互いにめでたしめでたしって感じの筋書きだったって事――」
「じゃあ、それを確かめる為にわざと逆ギレなんかしたの――」
私の問いに悪戯っぽく笑い、ペロリと舌を出すアリス。
「まあねっ――多田坂がスマホ使って何か変な事してるなってわかってたから、通報されそうになったら多田坂の事、追求してやろうと思って、店長さんに逆ギレし始めたらシュンとしちゃって――あぁ、これは通報しないな、カネ目当てだなって。だから、マイマイは正解だよ。始めから解答は一つしかなかったんだから――そんなに自分を責めないでよ――」
アイドルとして、普通の人間では体験し得ない世界に身を置いているとはいえ、アリスはまだ14歳の少女――。



