アイ・ドール


「アリス、二度と万引きなんてしないって私と約束して――」


 私の願いに答えず、パフェを食らい小狡そうに笑い、上目遣いで私を見るアリス。



 あの言葉の後の事は、よく覚えていない――。


 ココアを一口啜る――ぬるい。そうなるまで話を切り出すのに時間を費やしていた。



「マイマイには、悪いと思ってる――でも、本当にマイマイが来てくれるなんて思ってもみなかったな」


「どうして――」



「えへっ、やっぱりマイマイって真面目だね――普通、来ないよ。てっきり会社に連絡して、専門の人間が送り込まれて来るんだと思ってたんだけどなぁ――」


「専門の人間って――」


「うんっ、要するに、黒スーツにサングラスの、如何にも裏の世界の人間で、問題が表に出ない様に交渉する人の事」


「それって、脅しって事――」


「表向きは紳士的にだよ。いきなり殴る蹴るはないけど――まぁ、状況に応じてグロイ交渉もありって感じ――」




 ならば何故、アリスは「彼ら」ではなく私を選んだのか――彼らの方が「スムーズ」に事を収められただろうに。あんな「台詞」を吐いてまで――心が急激に萎れる。