何て嫌な女――。
自分の環境の優位さを良い事に、いつの間にか仲間を蔑み、偽善者の仮面を被り、上っ面な表現で現代社会の歪みを論じてみせている。
前向きな心、偽善の心が、私の体内で互いに蠢く。人はそれを「鬱」と呼ぶのだろう――。
「どう、穏やかな表情でしょ」
何を言っているのか。どうせ画面にはきっと、彼を見下した嫌味な私が映っているに違いない。「穏やかな表情」などと、またしても人をからかう様な言葉に私は憤慨し、彼のカメラを取り上げた。
「――――」
私の醜い、私自身を消去しようとしたモニター画面には、これまで見た事もない、これが私の本来の姿なのか――と思える、穏やかに振り返っている私が映し出されていた。
言葉が出ない。
無意識の中にある本質。
私の、私である、私たらしめている心を、彼は見逃さなかった。「カネ」がどうの、就職がどうの――今まで何を下らない理論を展開していたのだろう。
私の心にも、こんなにも穏やかな世界が存在している。
ナンパまがいに話かけられ、私の前に立っている男に焙り出された真実が、私の心を浄化してゆくのか――。



