アイ・ドール


 ドアを勢い良く開けるアリス――。





「キャァァァッ――てっ、店長さん何するんですかぁ。やめて下さいっ――」


 アリスが叫んだ――事の重大さに「ああっ」と川井出が立ち、アリスの肩に手をかけ室内に引き戻そうとする。




「店長さんも保安員のオジサンもキスだけじゃ物足りないなんてぇ、アリスもうお嫁に行けないよぉ――」

「なっ、何もしてないじゃないか」



 葵の様に甘く、かつ涙声で叫ぶアリスを必死で否定する川井出――多田坂はぶつぶつと呟き、動かない。


 激しくもみ合い、ブラジャーの右肩のストラップが外れるが、構わず中へ戻そうとする川井出――。


 尚ももみ合い、遂に左肩のストラップも外れる。




「いやぁっ――」


 身を屈め、両手で胸元を隠すアリス。怯んだ隙を逃さず、アリスの両肩をがっしりと掴む川井出――――しかし、次の行動に移行しない。





「あっ――」

 敗北を認めた川井出の淡白な声――。

 私は視線を二人の先に向ける。

 あの、怒号を浴びせられていたパートの女性がこちらを見ていた。


 怪訝な表情で川井出を刺す様な視線で見る――。