アイ・ドール


「結果さ、二度と正社員になれなくて、コンビニや自動車製造工場に流れたり、何になるのかわからない基盤の組みつけ――偽装請負会社に散々コキ使われて搾取され、ネットカフェに寝泊まりして、人間としての尊厳も未来も偽装化し、思考停止になっちゃって、知り合いのつてで何とか今の仕事にありついたってのに――その集大成がパンチラ盗撮かよっ、情けないよねっ――」


 一瞬、アリスに鋭い視線を向けた多田坂だったが、鋭さと哀れみが融合したアリスの視線に負け、悔しそうに目線を外す。



「な、何だよ。ふざけやがって――お、お前なんか眼中にないもんね。ガキのお前なんかより、あっ葵ちゃんやモカりんモコりんの方がずっと可愛いもんね」


 自らの言葉に興奮しているのか、「ふぅん」と鼻から荒々しい息を放出する多田坂。



 アリスを盗撮し、葵やモカ、モコにまで卑猥な妄想を抱き、欲望を貪ろうとする多田坂が許せない。



「キッ、超キモイ――」


 体を縮こませ、腕を交差させて二の腕を激しく掻くアリス――。



 アリスの仕草に誘われて、得体の知れない虫が背中で這いずり回る様な感覚が私を襲い、震えた――。