アイ・ドール


「エロイよね、エロエロ星人だよ――どうせ画像をタブロイド誌にでも売りつけて、国民的アイドルグループのあのメンバーの萌えパンチラショットにラヴラヴっ。なんて陳腐な見出しの雑誌が本屋に並ぶ様子を想像して、萌え萌えぇ――なんて考えてたんだろっ」


「――――」




「ったくさぁ、40も後半のいいオヤジが何考えてんの。とんだ転落人生だよね――猛勉強して2流大学に入ったはいいけど、講義なんて出ずに遊びまくってさ――でも、運が良かったね、バブルの時代だったから。就職先なんて引く手あまたで結局、接待の良かった会社に何にも考えずに就職しちゃってさ。でも入社したとたんにバブルが弾けちゃって、就職氷河期を勝ち抜いた新人達にあっという間に人間性もスキルも追い越され、社内に居場所がなくなって――俺の人生、こんなもんじゃない。なんてうそぶいて、血迷って会社辞めて――何とかなると思ってたら、バブル入社組なんかにもう扉は開いてなくて、どうにもならなくなって結局、フリーターになっちゃいました――みたいな感じだよねっ――」



 多田坂は、「うるさい、うるさい――」と小声で呟き続け、アリスに反論もしない。