アイ・ドール


「周りにちやほやされて、愛想振りまいてたんまりとカネが入ってくるお前らなんかにとやかく言われたくないんだよっ。俺だけじゃなく、殆どの家庭が苦労して生活しているんだよっ――それなのに、万引きなんかしやがって――お前に俺達の気持ちなんてわかってたまるかっ――」


 自らの家庭の事情まで吐露しての、川井出の精一杯の抵抗だった。


「あっはははっ――てっ、店長さんマジで言ってんの。あり得ないっつうの――とんだ茶番だね。奥さんのパートってレジ打ちとか、どっかのホームセンターでの仕事とかって聞かされてるでしょ――よくある手だね。でも実は違うんだよね。きっと人妻専門のデリヘル風俗に登録してて、その筋のマニアの皆さんとエロイ事してんだよ――そのカネをヘソクったり、通販で買い物しまくってストレス発散してるのさっ。だって最近、夜の方も久しく絡んでないでしょ――」


「ちっ、違うっ――」

 その後の言葉が続かず沈黙し、妻の行動を疑る様に記憶を辿る――疑心が確信に変わったのか、川井出の顔色、肌がゆっくりと変色して生気が失われてゆく――。


「ふっ――」

 堕ちてゆく川井出をアリスは鼻で笑う。