誰しもが「流れ」を逆算し、好景気時に産まれ、就職したいと考え、銀のスプーンをくわえて大富豪の家庭に産まれ出る事ができればどんなに幸せだろうか、と思うだろう――。
しかし、産まれる環境は選択できない。
では――幸せとは何か――――。
一流企業に潜り込み、同僚を欺き、上層部に媚びへつらう事で得られる限られた枚数の、年功序列型終身雇用列車なる虚しい指定券なのか――。
つまりは――「カネ」
この国、この世界は、カネに呪われてしまったのか――カネの為に嘘をつき、人を傷つけ、欺き、殺し、カネの上に立とうと血眼になる――。
絶対的な信用と価値を植えつけられた、天使と悪魔が同居する、人間が産み出したこの世界で最も「万能」な発明――。
人間は産まれた瞬間から「カネ」の呪縛に取り憑かれ、翻弄されながら、「死」をもって解放され、真の自由を体得する――。
ならば、如何にしてカネに翻弄されず、健全に生きて、穏やかに死を迎えられるのか――。
「――――」
「はっ――」とした。
今、こう考えている私自身は、いかに恵まれた立場にいるのかを――。



