「僕はこれにするよ」
川原に座って待っていれば、健太が丸い小石をやっと選んで帰ってきた。ヘタレでお人よしな上に、優柔不断って……。
少し呆れながら大きく息を吐き出せば、健太がムッと表情をしかめた。
「優柔不断とか思ったんじゃないだろうね?成人まであと8年だよ?大体、20歳になったら大人って訳じゃないし、そうとう頑丈な石じゃなきゃパックリ割れるかもしれないだろ?逆に琢磨は横着なところあるから、もっとよく選んだ方がいいんじゃないの?というかそもそも……」
「はい、はい。『そもそも無くす確率の方が高いと思うけどね』とか言うんだろー?」
「分かってるんなら、ちゃんとしなよ?」
「はは!ホントお人よしだよなー。俺の気まぐれの提案に全力で乗ってさ。……ま、そこがいいんだけど」
「るっさい!帰るぞ!バカ琢磨!」
「へい、へい」
別れ際、拳の代わりに先ほど拾った丸い石を合わせればコツっと少し高めの擦りあう音がした。
「またね」
「ん」
正反対の方向、お互いの家へ向けて自転車を走らせる。振り返れば、自転車に跨がる健太の背中はもう小さい。
この日を境に健太の様子がおかしくなった。そして街に悪い噂が回りだしたのもこの頃だった。
