店内を仕切る暖簾をくぐれば、金髪パーマの男性はパッと手を離した。

「2階から着替え適当に持ってくるから!そこら辺でブーツ脱いで、このスリッパ履いてね」

金髪パーマの男性はテキパキと指示を出して階段を駆け上がって行く。若葉はその背中に向かって、しっかり聞こえるようにお礼を言った。

「ありがとうございます!えっと、あの…」

お名前は何だろうかと、さっきの会話で出てこなかったか、言葉を繋ぎながら必死に思い返す。

階段の中腹で振り返った男性は、若葉の思考を理解したのか満面の笑みで言った。

「誠吾!僕は上矢誠吾(かみやせいご)っていうんだよ?」

「わ、私は雪村…雪村若葉でせっ…!あっ…」

…噛んでしまった。

やはりというか、仕方ないというか上矢さんは、ケラケラと笑い「でせって!でせってなにー!?」と、からかいながら、顔を赤く染める若葉を残して2階への階段を駆けていった。

「雪村若葉です…」

言い直せば今度はちゃんと言うことが出来た。誰も聞いてはいないけれど。

恥ずかしさで項垂れながら、ぐちょぐちょのブーツから足を抜いた。