時刻は20時過ぎ。駐車場は会社の裏口に位置していて、社員の車や、社名が入ったトラックが停まっている。4、5つの外灯が灯り、虫が体当たりしている。
女の子と2人きりになって、沈黙に困るのは初めてだ。中、高と共学ではあったが、女という生き物に興味がなく、寄ってきても相手が勝手に喋っているだけだったから。
だからと言って、別に雪村さんに興味があるわけではないけど。…ただ帰ってきてくれてよかったとは思う。だけど、実はまだあまり実感がない。頭では分かっていても、心がついていってない。
恵介はバックミラー越しではなくて、直接じっくりと雪村さんを見てみようと、ゆっくり後ろを振り返った。
恵介の視線に気づいた雪村さんは首を傾げて、眉尻を緩やかに下げた。きっと、どうしたのか訊ねているんだろう。
けれど、すぐに返事をすることが出来なかった。
外灯の灯が晴れ着姿や、薄化粧をした雪村さんをぼんやりと浮かばせている。目が離せない上に、不可解なことに心拍数が上がってしまったのだ。
