自分には、きっと一生まとわりついてくるであろう特殊な力が宿っている。
でも、そんな力に頼らずとも、大好きな人を笑顔に出来る、お菓子作りの道があると分かっただけで、自分がただ普通の人間に思えて嬉しかった。
大きくなったら、パティシエになって大好きな人に幸せをプレゼントしたい。
そんな夢を確かに持ち始めた頃には、誠吾は私立の中学校へと進学しようとしていた。
新学期には、制服に着られている同級生が体育館に、ぞろぞろと集合していた。
この中学校に進学したのは、誠吾だけ。だから、誰も冷ややかな瞳を向ける人間はいなかった。
「ねぇ、君さ…、それって天パ?」
「…ん、え、僕の、こと?」
「あらま、中身も天然ぽいね。翔(カケル)」
「そうだね、祥(ショウ)。いいおもちゃ見つけちゃったみたいだね」
「…あの」
誠吾よりも頭一つ分ほど背が高くて、制服をすでに着崩していて、髪の分け目が左右対称な瓜二つの顔が、含み笑いをして見下ろしてきた。
それが双子の門倉翔・祥との初めての会話だった。
