「…っ!!…ってぇ…」
頭の激しい痛みから始まった感覚のせいか、まだ意識と体を結びつかせられずにいた。
不思議なことに目を開けているはずなのに何も見えなかった。
本当に目を開けているのか確かめるために、ゆっくり手で確かめると指が瞼に触れた。そのままグゥーと上に押し広げてみても、映る色は黒だけだった。
とりあえず記憶喪失になってないか自問自答をしてみる。名前も年齢も分かるし、最後の記憶が正しければここがどこで、どんな状況なのかも思い出せた。
体に乗ったままのカゴを押してみたけれど、どうも力が上手く入らない。もう仕方がないと、両方の靴を脱いで体をズリズリと上の方へ背中で這うと、なんとか体は自由になった。
それにしても…暗かった。
小窓はあるけれど、小窓側の外は樹木が生い茂っていて、葉っぱで覆われているせいで一切の光の侵入を許していなかった。
全ての感覚をフル回転させて、慎重に這いつくばりながら扉を目指した。
