なんとかカゴを用具室に引き上げることに成功し、いつもの定位置まで移動させた。
あとは軽くグランドの見回りをして帰ろうと思い、歩き出そうとしたところ、足がツンと後方に引っ張られてしまい歩き出せなかった。
足元を確認するとどうしたてそうなったのか、キャスターと靴紐が複雑に絡まり合っていた。
息を大きく吐きながらしゃがみこんで、キャスターから靴紐を適当に外そうと試みたけれど、やっぱりというべきか、余計に絡まってしまった。
「はぁ~…ったく」
その時は焦りと苛立ちとが混ざってしまっていて、冷静な判断が出来なかった。
恭平は立ち上がって自由な方の足をカゴの側面に当てて支えにすると、靴紐が千切れてもいいくらいの勢いで、絡まっている方の足を思いっきり後ろに引いた。
そうすれば靴紐は更にきつく靴を締め付けただけで、支えにしていた足がすべると体が後ろに倒れる。最悪なことに反動でカゴまで恭平の後に続いて倒れた。
重さとして20キロはある鉄製のカゴの下敷きになった恭平は後頭部に激しい痛みと、シンバルを打ち鳴らしたような金属音の震えをどこか遠くで聞いた。
