「遅い。人を餓死させる気?」
「ごめんってば。混んでたんだよ」
ホームにつくと、相変わらず休みなくキーを叩いていた尚は不機嫌そうに顔を上げた。
買ってきたパンを手渡すと、ようやく動かし続けていた手を休め、袋を破いた。
「どうですか」
「何が」
「あたしの課題です」
「余裕だね。俺を誰だと思っているの」
いや、本当に誰なんでしょうか。
相変わらず横柄な返答に、何も返せず、もしゃもしゃと菓子パンを咀嚼する。まるで王族のような尚が、黙って同じ菓子パンを食べているのが、なんだかしらないけれどとても面白い。
まあ、彼が手にすればきっと安い食パンもホテルブレッドのような高級パンに見えてしまうのが癪なのだけれど。なにはともあれ会ってまだ2回目の人間に、よくここまで我侭王子っぷりを発揮できるよな。
じっと見つめすぎたのか、尚はこちらを見る。
「何見てるの」
「いや、さっきと別人だなと思って」
思わず、本音が零れて慌てて口を押さえる。
恐る恐る尚を仰ぎ見れば、予想外にそこにはキョトンとした顔を浮かべる彼がいた。

