憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


「そういや、一限大丈夫だった?」

思い出したように千秋がポンとあたしの肩を叩いて苦笑いする。
その表情にイラつく。


「大丈夫な訳ないでしょーが。バッチリ課題を渡されたわよ」

「だよなぁ、田丸じゃな。あいつねちっこいし」

千秋は、どうやら自分が居眠りをしてしまったことに少し責任を感じているらしかった。
ぽりぽりと茶色の髪の毛を掻きながら困った様な表情をつくる。

「……課題、手伝おうか?」

申し訳なさそうにそう言う千秋。
こいつはあたしと違って、昔から勉強がよくできた。物心ついた頃からいつもあたしの一歩先を歩き、そして、まるでヒーローのようにいつも手助けをしてくれていた。

「いいよ、大丈夫」

あたしがそう言えば、千秋は面食らったように目を丸くした。

ああ、そうか。
思い返してみれば、今みたいな千秋の助けを断ったのは初めてだ。

「まじ?」

「うん。まじ。大丈夫だから」

「そっか」

妙な沈黙。
なんだこれ。なんでちょっと気まずい感じになるのだろうか。

「あたし、もう行かなきゃ」

「ああ」

またね、と言って千秋と別れた。昼休み開始のベルがなってから随分と時間が経ってしまった。あたしは、歩く速度を速めて尚のいるホームへと急いだ。