憂鬱なる王子に愛を捧ぐ



「遅い」

偉そうに尚が言う。
あたしは、必死に謝るものの、なんだか無性に嬉しくて口元が緩みっぱなしだ。

残暑が厳しい、夏休みの最終日。
今日はこれから、三人で尚のもう一つの家に行く。ずっと尚のことを心配していた美華さんに会いに行くのだ。

「なんだよ真知、なんか嬉しそーだな」

千秋が笑いながら言う。
そっと尚を見上げれば、「まったく」と呟きつつも小さく笑った。

時には嘘をついて、道に迷って、理解できなくて、踏み込めず悩むことだってある。けれど、そんな感情さえ独りでは決して気づくことの出来ないもので。

大好きなあなたがいるから、泣きたくて、悲しくて、切なくて、でもそれ以上に溢れるくらいの幸せを感じることが出来たんだ。

「うん、最高に嬉しいよ。それにしあわせ」

答えたあたしに、千秋は一瞬面食らったような顔をした後、大きく笑って尚の肩に腕をまわした。尚はよろけて眉をしかめるも、されるがまま。そんないつも通りのふたりのやりとりに、自然と笑みがこぼれた。

きっと大丈夫。未来は明るいだろう。
そしてあなたへの愛の誓いは、世界に小さな光を灯す。



 END