憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


尚は、ゆっくりと目を細めながらあたしに言う。それがあまりにも図星すぎてあたしは小さく息を呑んだ。単純なあたしは、そんなものが嬉しいし、やっぱり安心だって出来るのだ。

「……そんなの、尚がわかりにくいせいでしょうが」

「真知と千秋を基準にしたら、そのほかの人間はみんな分かりにくいよ」

なにそれ。千秋もセットで結構酷いことを言われている。

「だから、あげるよ」

尚が、ポケットから何かを取り出して、あたしの掌に乗せた。きらりと光る銀色は。

「傍にいてくれる?」

両手で受け止めたそれは、銀色の鍵。
尚の家の合い鍵だ。

「……あぁ、……もうっ!」

必死にとめたはずの涙がまたしつこくこみあげるものだから、あたしは咄嗟にぎゅうと瞼を閉じた。もちろん、鍵はしっかりと胸に抱く。傍にいるだなんて、そんなの。

「当たり前でしょう!」

だってこの先、あなたなしの未来なんて想像出来ない。
きっと、幸せでも、例えそうじゃなくても、どんな場面を想像したって当たり前のように尚はいる。

たまらず抱き締めた。
全身で、大好きな人の形を、温度を感じる。

キンと飛行機が飛び立つ音。
展望デッキには、あたしと尚しかいない。

「愛してるぜ、尚」

笑ってそう言えば、尚は少し呆れたようにあたしを見つめた後に、綺麗に笑った。