憂鬱なる王子に愛を捧ぐ




「あの飛行機かな~」

あたしと尚は、展望デッキから空を見上げる。
ゆっくりと空に向けて飛行機の行く先を人差し指でなぞった。

あたしの横で、同じように空を見上げている尚をちらと見る。さわりと吹いた風に、尚の漆黒の髪がきらきらと揺れる。綺麗な二重がゆっくりと細められるのに、心臓が馬鹿正直にどきりと鳴った。

「真知」

「な、なに?」

返事をするだけなのに、変に緊張してしまうあたしに尚が小さく笑った。この綺麗な顔には、一向に慣れることが出来ない……。

「変な顔。ひきつってるけど」

「変!?言っておくけど、尚のせいなんだからね!!」

「は?俺の?なんで」

「……ていうか、人の顔見て変はないでしょ、変は!」

そりゃ、あんたに比べれば顔のつくりなんて一筆書きみたいなものかもしれませんけど。あたしは、まだプルタブを開けていない缶コーヒーを手の中で転がしながら言った。

本当に。
いつも人を振り回して、素直の真逆に生きるばかりで、何を思っているのか少しも分からなかった。
他人になんて興味ないって顔で、いつも余裕たっぷりで、それでも、あたしや千秋のことを一番に理解しようとしてくれる。

こんな小難しい人間に、今では好きという感情が溢れるんだから、人生ってわからない。それが原因で顔が強ばってしまうことくらい、いい加減分かって欲しいものだ。

あ、そうだ。尚がぽつりと呟いた直後に、何を思ったのか尚の指があたしの脇腹をくすぐった。

「っぎゃ、やめ……、ちょ!あは、あははっ、やめてって!」

苦しいやらくすぐったいやらで、あたしは体をよじらずにはいられない。