小さく舌を出しながら、そっとサイズの合わない指輪をポーチから取り出して尚へと差し出す。
「結衣の望む形とは違うけど、俺は結衣のこと、好きだよ。真知に出会う前から。嘘は吐いてたけど、きっと結衣のことだけは特別だった」
尚の言葉に、結衣ちゃんの瞳が揺れる。尚が、鞄から細長い箱を取り出した。中に入っていたのは、指輪と同じ色の細い鎖のネックレスチェーンだった。尚は、結衣ちゃんが持つ指輪に、丁寧に細い鎖を通す。
「……そんな大切なことに気づこうとしなくて、ごめん。俺は、ずっと結衣に救われてた。今度は、結衣が俺を頼ってよ」
結衣ちゃんの頬を、透明な滴が一筋つたう。ごしごしとそれを掌で拭って、くしゃりと笑った。
「しかたがないなあ。私の、お兄ちゃんは」
語尾が震える。
すべてが、すぐに変わるわけじゃないけれど、少しずつ、少しずつ何かが形を変えていく。
尚が、柔らかく微笑んだ。
そっと腕を伸ばし、結衣ちゃんの首にネックレスをかけた。胸元で揺れるリングが、きらりと光る。
「ありがとう」
結衣ちゃんは尚に飛びついて、ぎゅっとその両腕で尚を抱き締めた。
そのまま、時が止まってしまったかのように動かない結衣ちゃんに、尚が彼女の名前を呼ぶ。

