憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


「来てくれて、ありがと。尚」

「来ないと思ってた?」

「うーん、五分五分かな」

結衣ちゃんは、はにかむように笑った。
そんな彼女の白く細い手をとって、尚がぎゅうと握りしめた。

「ごめんね」

「なんで、謝るの?もしかして、私を振ったことで……、なんて言わないよね」

尚は小さく首を横に振って、結衣ちゃんと視線が合うように膝を曲げた。

「ずっと、優しい振りをしていて、ごめん」

「……許してなんて、あげない」

つんとそっぽを向いた結衣ちゃんに、尚は一瞬呆気にとられるも、くつくつと笑った。ちらりと目線をやる結衣ちゃんの頬は上気して赤い。

「かっこいいなんて、反則だよ」

ぽつりと呟く結衣ちゃんに、あたしも深く頷いた。
まったく、本当にそのとおりだ。

「結衣、こないだあげた指輪、持ってる?」

結衣ちゃんは、ハッとしたように尚の顔を見る。手を腰に当てて、「捨てちゃったもん」と言う。こういう素直じゃないところが尚にそっくりなんだ。あたしはポンと結衣ちゃんの肩を叩く。

「うそつかないの」

「……ちぇ。だって、私ばかり振り回されて悔しいじゃない」