「真知、早くしてよ」
「え!?な、なんであたし……」
戸惑いながら聞けば、尚はあきれたようにあたしに向かって手を差し出す。
「結衣だって、あんたのその単純さに救われたんだよ」
「な、なによー!人を単細胞みたいに!!」
照れくさくて、思わず大声を上げてしまった。結衣ちゃんを、そして尚を、少しでも支えることが出来たのだろうか。そんな風に、自惚れてしまって良いのだろうか。
単純なくせに、肝心なところで逃げだそうとする自分自身を、あたしはずっと嫌いだった、でも、そんなあたしを変えてくれたのは、尚に千秋。家族と同じくらい、大切な人。
一度だけ後ろを振り返る。
千秋は、早く行けと笑いながら手を振った。
「それじゃ、いってきます」
エントランスを出て、バイクに跨がる。
見上げれば、青く高い空には、入道雲の代わり秋を知らせるような柔らかなひつじ雲が浮かんでいた。

