憂鬱なる王子に愛を捧ぐ




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「いつの間にか夏も終わっちゃったよな~」

千秋が、ココアに口をつけながらぼんやりと呟くのに小さく頷く。
慌ただしかった夏休みも後数日で終わってしまう。残暑はあるものの、夕方も過ぎれば涼しい風が吹くようになった。

「……どうでもいいけど、人の家に入り浸るのやめてくれない。鬱陶しいから」

「なんだよ、ヒサ!おまえが最近テンション低いから元気づけにやってきたっていうのに」

「頼んでないし」

にっこり笑いながら「照れんなって!」という千秋に、今度こそ諦めたように尚が大きなため息を吐いた。

「ま、まあまあ……」

「ていうか、ヒサ。時間大丈夫?」

「うん、そろそろ」

なんてことない風を装う尚に、あたしと千秋は思わず顔を見合わせてしまう。やれやれと肩を竦めた千秋が、ぱしんと尚の背を叩いた。それが結構な力だったものだから、尚の体が小さくよろめく。

「……何する……」

「寂しくなるな」

文句を言おうと口を開いた尚は、驚いて千秋を見つめた。
ああ、やっぱり気がついてなかったんだ。ずっと、感情を押し込めて人と接してきた尚は、たまに自分の気持ちに酷く疎いことがある。特に、辛いとか悲しいとか、そういったものに。プライドが高いというのも手伝って、それがさらにわかりづらいものだから、うっかりしていると見逃してしまう。