憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


ざぶざぶと波間をぬって、ようやく砂浜へと辿りつく。
濡れた服が肌にへばりついてとても気持ちが悪い。と、思いきや、目の前で何の躊躇いもなくシャツを脱ぎ捨てる尚。

「ちょ、ちょっと!尚!!」

「何?」

「何じゃないわよ、レディの前でっ」

非難の声を上げれば、尚はわざとらしくきょろきょろと辺りを見渡して、"どこにレディがいるだ"と言わんばかりに首を傾げてみせる。

めちゃくちゃ腹立たしい。

「誰のせいでずぶ濡れになったと思ってるんだ。そんなに嫌なら見るなよ、変態」

「ム、ムカつくっ」

「そうだ、名案が閃いた」

尚は、にっこりと麗しい笑みを惜しげもなく浮かべて、バイクの後部座席にくくりつけられた荷物から財布を取り出して、あたしへと手渡した。

「この天気だし、20分あればシャツも問題なく乾くはずだ。ちょうど、往復そのくらいかかる距離に個人経営のコンビニがある」

「……えっと、あの……」

「俺は今、無性にコーラが飲みたい。真知も好きなものを買っていいよ。奢ってあげるから」