憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


爪先が砂浜に取られ、バランスが崩れる。
次の瞬間、押し寄せた波が直撃し、顔面にものすごい水圧を受けた。

「おい、真知……!」

わたわたとするあたしに向けて伸ばされた手を、咄嗟に掴んだ。
今度は尚がバランスを崩す。

「やばい」

「……え、え、ちょっ―――!」

尚は掴んだ手を離すことなく、あたしを巻き添えにして一緒に海へと倒れこんだのだった。
全身をこれでもかと緩い波が撫でる。

「……尚さん、酷いですよ……」

「何言ってんの。元はと言えば、真知が原因だろ」

白い頬に張り付いた髪の毛をかき上げながら睨む尚。
綺麗だけど、怖すぎる…!

「……っふは」

「え?」

てっきり毒舌がくるのかと思いきや、尚はついに耐え切れなくなった様子で笑いを漏らした。