憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


腕まくりをして、パンツの裾を思い切り上げて、海に足をつける。冷やりと冷たくて気持ちいい。
後ろを振り返って、砂浜にたってぼんやりこちらを見つめる尚を手招きした。

「尚!早くおいでよ!!」

「……え」

嫌そうに声を漏らすも、渋々靴を脱いで砂浜を歩く。
手の届く距離まで尚がやってきたのを見計らい、あたしは途中に寄ったコンビニで貰ったビニール袋に素早く海水を入れて尚へと引っ掛けた。

―ばしゃんっ!

「……」
「……」

水も滴るイイ男!なんて言って、ウィンクでもかまそうと思っていたあたしは思わず固まる。軽く引っ掛けるだけの予定が、目の前の尚はずぶ濡れなんですけれども。

「……真知」

にっこりと微笑んでいるのに、ちっとも笑っていない。
嫌な予感。

「あの、あのですね、尚様……、あはは」

じりじりと後ずさりをして、浅瀬を一気に走り出す。
バシャバシャと音を立てながら、洋服が濡れるのも構わず真っ直ぐに。

「きゃあああ!ごめん、尚……!軽いジョークじゃん、ね、許してー!」